数学 A¶
まえがき¶
数学 A は「離散的・図形的な発想」が中心。数学 I が「式と関数」の連続的な世界だとすれば、A は「数えたり、形を観察したり、整数の性質を調べる」世界です。
共通テストでは: - 場合の数と確率(必出) - 図形の性質 - 整数(または期待値・統計から選択)
の 3 単元から 大問 2 つ選択 する形式です。得意 2 単元に絞って深掘り が高得点の戦略。
第 1 章 場合の数¶
「何通りあるか」を数える分野。CS の組合せ論(教科書第 1 章)と直結。
1.1 集合の要素の個数¶
1.1.1 和集合と積集合¶
\(|A \cup B| = |A| + |B| - |A \cap B|\)
例: 100 人のクラスで、英語が好きな人 60、数学が好きな人 50、両方好きな人 30。少なくとも一方が好きな人は? \(60 + 50 - 30 = 80\) 人
1.1.2 補集合¶
\(|\bar A| = |U| - |A|\)(\(U\) は全体集合)
「少なくとも 1 つ」より「1 つもない」の方が数えやすい時は補集合を使います。
1.2 場合の数 — 数えるルール¶
1.2.1 和の法則と積の法則¶
和の法則: 互いに排他的なら足す。 積の法則: 段階的に選ぶなら掛ける。
graph LR
Start[食事を選ぶ] --> A[A 定食]
Start --> B[B 定食]
Start --> C[C 定食]
Start --> D[D 定食]
Start --> E[E 定食]
A --> Drink1[飲み物 4 種から 1 つ]
B --> Drink2[飲み物 4 種から 1 つ]
C --> Drink3[飲み物 4 種から 1 つ]
D --> Drink4[飲み物 4 種から 1 つ]
E --> Drink5[飲み物 4 種から 1 つ]
style Start fill:#ffeb3b
例: 食事 (5 種) と飲み物 (4 種) を 1 つずつ選ぶ → \(5 \times 4 = 20\) 通り(積の法則)。
例: 食事 (5 種) または飲み物 (4 種) を 1 つ選ぶ → \(5 + 4 = 9\) 通り(和の法則)。
1.3 順列¶
「\(n\) 個から \(r\) 個を順序を考えて並べる」場合の数。
例: 5 人から 3 人を選んで一列に並べる \(_5P_3 = 5 \times 4 \times 3 = 60\) 通り
1.3.1 階乗¶
例: \(5! = 120\)
1.3.2 円順列¶
「円形に並べる」と、回転を同一視するので \((n-1)!\) 通り。
例: 6 人が円卓に座る方法 → \(5! = 120\) 通り
1.3.3 同じものを含む順列¶
\(n\) 個のうち、\(a, b, c\) 個が同じ場合: $\(\frac{n!}{a! \cdot b! \cdot c!}\)$
例: AAABB を並べる方法 → \(\frac{5!}{3! \cdot 2!} = 10\) 通り
1.4 組合せ¶
「\(n\) 個から \(r\) 個を選ぶだけ(順序なし)」。
例: 10 人から 3 人の委員会 → \(_{10}C_3 = 120\) 通り
1.4.1 順列と組合せの関係¶
「並べる = 選ぶ × 並べ替え」と覚える。
1.4.2 性質¶
- \(_nC_r = {}_nC_{n-r}\)(選ぶ ⇔ 選ばない)
- \(_nC_0 = {}_nC_n = 1\)
- \(_nC_r = {}_{n-1}C_{r-1} + {}_{n-1}C_r\)(パスカルの三角形)
1.4.3 重複組合せ¶
「\(n\) 種類から重複を許して \(r\) 個選ぶ」場合の数: $\(_n H_r = {}_{n+r-1}C_r\)$
例: りんご・みかん・バナナの 3 種から重複を許して 5 個 → \(_3H_5 = {}_7C_5 = 21\) 通り
1.4.4 仕切り棒テクニック (stars and bars)¶
「同じものを区別する箱に分ける」と読み替え可能: - \(n\) 個の \(\bullet\) と \(r-1\) 本の \(|\) を並べる - \(_{n + r - 1}C_{r-1}\) 通り
例: 5 個のリンゴを 3 人に配る(0 個 OK)→ \(_{7}C_2 = 21\) 通り
💡 共通テスト頻出 順列・組合せの選択を間違えるとほぼ全滅。「順序の有無」を必ず確認。
第 2 章 確率¶
「起こりやすさ」を 0〜1 の数値で表す。
2.1 確率の基礎¶
2.1.1 定義¶
「同様に確からしい」場合: $\(P(A) = \frac{|A|}{|\Omega|}\)$
例: サイコロで偶数が出る確率 → \(3/6 = 1/2\)
2.1.2 基本性質¶
- \(0 \leq P(A) \leq 1\)
- \(P(\Omega) = 1\)
- \(P(\bar A) = 1 - P(A)\)(余事象)
- 互いに排反: \(P(A \cup B) = P(A) + P(B)\)
- 一般: \(P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B)\)
2.1.3 「少なくとも 1 つ」は余事象¶
「少なくとも 1 つ起きる確率」より「1 つも起きない確率」が楽。
例: サイコロを 4 回投げて少なくとも 1 回 6 が出る確率 - 1 回も出ない確率: \((5/6)^4 = 625/1296\) - よって \(1 - 625/1296 = 671/1296 \approx 0.518\)
2.2 独立事象と試行¶
2.2.1 独立¶
\(P(A \cap B) = P(A) \cdot P(B)\)
「片方の結果がもう一方に影響しない」。
2.2.2 反復試行¶
確率 \(p\) で起こる試行を \(n\) 回繰り返し、\(k\) 回起こる確率:
例: コイン 10 回中 7 回表 → \(_{10}C_7 (1/2)^{10} = 120/1024\)
2.3 条件付き確率¶
「\(B\) が起きたという条件のもとで \(A\) が起きる確率」: $\(P(A | B) = \frac{P(A \cap B)}{P(B)}\)$
例: トランプから 1 枚引き、それが「赤」と分かった上で「ハート」である確率 \(P(\text{ハート} | \text{赤}) = \frac{P(\text{ハート})}{P(\text{赤})} = \frac{1/4}{1/2} = 1/2\)
2.3.1 乗法定理¶
2.3.2 ベイズの定理¶
CS 教科書第 4 章でも詳述。条件と結果を入れ替える 公式。
例: 病気の罹患率 1%、感度・特異度 99% の検査で陽性 → 本当に病気の確率は?
直感は「99%」と思いがちですが、計算すると 50%。これが 基準率の誤謬。
2.4 期待値¶
「得られる値の平均」。
例: サイコロの目の期待値 $\(E = 1 \cdot \frac{1}{6} + 2 \cdot \frac{1}{6} + \cdots + 6 \cdot \frac{1}{6} = 3.5\)$
2.4.1 ギャンブル・宝くじへの応用¶
「期待値が払い込みより低ければ損」。宝くじの期待値は購入額の 50% 程度。
例: 100 円賭けて、1/100 の確率で 50 円獲得、99/100 の確率で 0 \(E = 50 \cdot 0.01 + 0 \cdot 0.99 = 0.5\) → 100 円払うので 大損。
💡 共通テスト頻出 確率と期待値は計算量が多い。樹形図・表で整理 してから式を立てる。
第 3 章 図形の性質¶
ピタゴラスの定理を超えて、三角形・円の性質を本格的に。
3.1 三角形の性質¶
3.1.1 角の二等分線の性質¶
角 \(A\) の二等分線が辺 BC を \(D\) で分けるとき: $\(BD : DC = AB : AC\)$
3.1.2 重要な点¶
| 点 | 位置 |
|---|---|
| 重心 | 中線の交点(中線を 2:1 に内分) |
| 外心 | 垂直二等分線の交点(外接円の中心) |
| 内心 | 角の二等分線の交点(内接円の中心) |
| 垂心 | 垂線の交点 |
| 傍心 | 1 つの内角と他 2 つの外角の二等分線 |
3.2 円の性質¶
3.2.1 円周角の定理¶
「同じ弧に対する円周角は中心角の半分」。
C
● ← 円周角 θ
/|\
/ | \
/ | \
/ | \
/ | \
/ ● \ ← 中心
/ /O\ \
/ / \ \
A●──/──────\──●B
中心角 ∠AOB = 2θ
円周角 ∠ACB = θ
「中心からの方が 2 倍開いて見える」と覚える。
3.2.2 接線と弦¶
「接線と弦のなす角 = 弦の対する円周角」(接弦定理)。
3.2.3 円に内接する四角形¶
「対角の和が 180°」。
3.2.4 方べきの定理¶
円外の点 P から円に交わる 2 直線を引くとき: $\(PA \cdot PB = PC \cdot PD\)$
3.3 メネラウスとチェバ¶
3.3.1 メネラウスの定理¶
三角形 ABC と 1 本の直線について: $\(\frac{BP}{PC} \cdot \frac{CQ}{QA} \cdot \frac{AR}{RB} = 1\)$
3.3.2 チェバの定理¶
三角形 ABC の頂点を通る 3 本の直線が 1 点で交わるとき: $\(\frac{BP}{PC} \cdot \frac{CQ}{QA} \cdot \frac{AR}{RB} = 1\)$
メネラウスとチェバは「頂点 → 辺 → 頂点と一周する」と覚える。
3.4 作図¶
中学のコンパスと定規の作図を、定理に基づいて理由づけ。 - 角の二等分線 - 垂直二等分線 - 円に内接する正多角形
3.5 空間図形¶
- 多面体(オイラーの定理 \(V - E + F = 2\))
- 球の表面積・体積
- 平面と直線の位置関係
第 4 章 整数の性質¶
CS 教科書第 1 章でも扱った数論の入り口。
4.1 約数と倍数¶
4.1.1 約数の個数¶
\(N = p_1^{a_1} \cdot p_2^{a_2} \cdots p_k^{a_k}\)(素因数分解)のとき、約数の個数は $\((a_1 + 1)(a_2 + 1) \cdots (a_k + 1)\)$
例: \(12 = 2^2 \cdot 3\) → \((2+1)(1+1) = 6\) 個(\(1, 2, 3, 4, 6, 12\))
4.1.2 約数の総和¶
例: \(12\) の約数の総和 \(= (1+2+4)(1+3) = 7 \cdot 4 = 28\)
4.2 最大公約数と最小公倍数¶
4.2.1 GCD と LCM の関係¶
4.2.2 ユークリッドの互除法¶
\(\gcd(a, b) = \gcd(b, a \bmod b)\) を繰り返す。
例: \(\gcd(252, 198)\) - \(252 = 198 \cdot 1 + 54\) - \(198 = 54 \cdot 3 + 36\) - \(54 = 36 \cdot 1 + 18\) - \(36 = 18 \cdot 2 + 0\) - 答え: 18
4.3 整数の余り(合同式)¶
\(a \equiv b \pmod n\): 「\(a\) と \(b\) を \(n\) で割った余りが等しい」。
4.4 不定方程式¶
\(ax + by = c\) の整数解。
例: \(3x + 5y = 1\) の整数解 - 試行錯誤で \((x, y) = (2, -1)\) が 1 つ見つかる - 一般解: \((2 + 5k, -1 - 3k)\)(\(k\) は整数)
4.4.1 解き方の手順¶
- \(\gcd(a, b)\) が \(c\) を割らないと解なし
- 1 つの解を見つける(ユークリッドの拡張版)
- 一般解を書く
4.5 進数¶
- 10 進数 → 2 進数: 2 で繰り返し割る
- 2 進数 → 10 進数: 重みで掛ける
例: \(13_{(10)} = 1101_{(2)}\)(\(8 + 4 + 0 + 1\))
共通テスト対策¶
選択戦略¶
数学 A は「場合の数と確率」「図形の性質」「整数」から 2 つ選択(年によって変動)。
おすすめ: - 理系: 場合の数・確率 + 整数 - 文系: 場合の数・確率 + 図形
「期待値」が新課程で範囲。共通テストにも登場。
高得点のコツ¶
- 場合の数で「順序」を必ず確認
- 確率では樹形図で整理
- 図形は補助線を引く勇気
- 整数は素因数分解 + ユークリッド
章末問題¶
- 6 人から 4 人を選んで一列に並べる方法は?
- 「ABCDE」の 5 文字を並べるとき、A と B が隣り合う並べ方は?
- コインを 5 回投げて、表が 3 回以上出る確率を求めよ。
- 袋に赤玉 3 個、白玉 2 個がある。2 個取り出すとき、両方赤の確率は?
- 期待値 3.5 のサイコロを 2 回振ったときの目の和の期待値は?
- 三角形 ABC で、AB = 4, AC = 6, \(\angle A = 60°\)。重心から BC への距離を求めよ。
- 円周角の定理を、中心角を使って証明せよ。
- \(\gcd(420, 252)\) を互除法で求めよ。
- \(5x + 3y = 1\) の整数解をすべて書け。
- \(24\) の約数の個数と総和を求めよ。
次の一冊へ¶
数学 A を終えたら、数学 II へ。式と証明、複素数、図形と方程式、三角関数、指数・対数、微積分の基礎を学びます。